2021年12月11日土曜日
Wien bridge oscillator の作製
2021年11月13日土曜日
オーディオインターフェース接続用 アイソレータBOXの作製
前回に引き続き、便利な測定治具を作りました。
比較的低周波(20Hz~22kHz)の微小信号の簡易測定には、市販のオーディオインターフェースが使えます。最近はハイレゾの流れもあり、高分解能&高速サンプリング可能な ADC を積んだオーディオインターフェースが安価に手に入ります。
オーディオインターフェースのライン入力 or マイク入力に、測定したい信号を入れてやり、飽和しない程度のゲインに調整した後、PC ソフト(例えば WaveSpectra や Audacity)上で信号を観測できます。
測定対象物が電池駆動でフローティング状態にできるのであれば特に問題になりませんが、直流安定化電源やオシロスコープなどと GND を共通にしている場合には、GND ループによるノイズの侵入で S/N が低下し正確な測定ができません。
そこで今回はライン信号用トランスを使用したアイソレータBOXを作ってみました。
と言ってもトランスを箱に入れてコネクタを取り付けただけの簡単工作ですが・・・。
中身はこんな感じになっています。
丸座絶縁BNCコネクタ(秋月:C-00093)→ トランス(松下通信工業 IT-1107)→ XLR コネクタ(NEUTRIK NC3MD-LX-HE)です。信号用トランスには1次2次間のシールドがあり、このシールドを XLR コネクタの GND およびケースと接続しています。トランスを固定するホルダは3Dプリンタで作成し、ケースとは強力両面テープで固定しています。
トランスの詳細スペックは不明ですが、おそらくライン入力用のトランスだと思います。
1次2次間、1次シールド間の耐圧は 1000V 以上ありました。
オーディオインターフェースには Steinberg の UR22mkII を使用しています。
アイソレータBOX との接続は約 2m のシールドケーブル(線材は CANARE L4E6S BLACK)を使用し、バランス接続しています。
概ね 20Hz~20kHz でフラットな特性です。
1uV → -111.21dBFS
2021年9月23日木曜日
低周波用LNAの作製
周波数帯域 0.1~1000Hz、ゲイン 60dB、雑音6nV/√Hz の LNA を作製したので紹介します。
本アンプをオシロスコープの前段に配置することで、オペアンプや電源ICなどから出力される微小なノイズ信号を高いS/Nを維持した状態で測定することが可能となります。
回路は非常にシンプルです。
アナログデバイセズの低雑音ゼロドリフトアンプ ADA4522-2 で 60dB の非反転増幅回路を2セット構成し、その出力信号を抵抗で合成することでアンプで生じるノイズの低減を図っています。1セットのみでは出力雑音が 310uV 程度ですが、2セットをパラで接続することで 240uV 程度に改善されました。
電源は12V入力±5V出力の絶縁型DCDCコンバータを使用しています。そのまま使用すると100kHz程度のスイッチングノイズを大量に輻射します。銅箔テープで6面シールドして磁束成分の漏れを抑え、2次側出力にはフェライトビーズを挿入してノイズをカットしています。この対策によりアンプ出力部において、DCDCコンバータ由来のノイズはほぼ観測できないレベルまで低減できています。
ケースにはタカチの TD型アルミダイキャストボックス TD7-10-3N を使用しました。
堅牢な作りの割にアルミ製で加工しやすく、シールド性能にも優れており気に入りました。
アンプの周波数特性実測値です。
入力端子直近に60dBのアッテネータを挿入し、FGから正弦波を入力して出力振幅をプロットしたものです。
概ね期待通りの特性が得られています。
なお、本評価を行う際には、アッテネータの挿入位置に注意する必要があります。
損失が全く存在しない理想的な同軸ケーブルであれば、アッテネータをどこに挿入しても同じ結果が得られますが、現実の同軸ケーブルには僅かな直流抵抗が存在します。FGからアンプまでの同軸ケーブルに生じるコモンモード電流と、この直流抵抗により生じるノイズ電圧がS/Nの悪化を引き起こします。
アッテネータをFG直近に挿入した場合は、アッテネータで減衰された微弱な信号に対して、同軸ケーブルのコモンモード電流に起因するノイズが加算されS/Nが悪化します。
⇒ アンプ入力信号 = (FG出力 / ATT) + コモンモードノイズ
アッテネータをアンプ直近に挿入した場合は、FGの信号とノイズ信号の加算値に対してATTが掛かります。
⇒ アンプ入力信号 = (FG出力 + コモンモードノイズ) / ATT
となり、高いS/Nを維持した状態で微弱信号を入力することが可能となります。
雑音性能についても実測しました。
アンプの入力端子を50Ωで終端し、出力雑音(実効値)をオシロスコープで測定しました。
オシロスコープ自身の雑音を差し引くとアンプ単体の入力換算雑音は 240nVrms 程度でした。入力換算雑音密度に換算すると 240nV / sqrt(1000 * 1.571) = 6.05nV/√Hz となります。
なお、LTspiceでシミュレーションすると入力換算雑音は251nVとなり、実測値と近い値が得られました。
770ms周期で謎のドロップがあります。内部のデジタル処理に起因しているのだろうか・・・
コンデンサ接続により出力ノイズの低減が図れるようです。
さらに帯域を落とした 0.1~10Hz 版もそのうち作ってみたいと思います。